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とりあえず、ひかりのくに
     
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2014.02.18 (Tue)

「蔵出し蜜柑」というのがあるそうだ。

先日、どこかの新聞のネット記事と映像を見て、これは おいしそうだ、と思っていたところ、きのう、近所の大型スーパーで、「熟成みかん」として売り出しているのを見て、これって「蔵出し」のことなのかな?と思い、私は、蜜柑に関しては、少し触ってみただけで、甘いか どうか、わりと見分けるカンがあるほうなんだけど、この蜜柑は、たしかに甘そうだ、しかし、、、と、ふだん、果物類を購入することは特に少ない私は、少々躊躇ったすえに、

最近いよいよ、のどが やられそう(私、もともと、のども弱いタチ)なこともあって、ビタミン補給だし!と、8個ほど入った一袋を購入してみた。

その晩、食事のあとで、一つ剥いたとたん、立て続けに4個食べてもうた。。。

喉が少し渇いていたせいもあったが、たしかに甘い。おいしい。

天候の おかげで、今年は特に出来が良いと言っていた農家の人の丹精ぶりも如実にあらわれたような甘み。

 

実家の親父も そうだったが、すっぱいのを好む人もいるけれど、私は、蜜柑など、すっぱいのは苦手なほうなので。

実は、蜜柑そのものだけを食べたのって、数年ぶりなのだ。

果物や お酒は、料理や菓子類のなかに用いてあるほうが好きで。

 

先日読んだ、そのネットの新聞記事にも、世間の蜜柑離れのことが述べてあった。

なるほどなあ、自分にも思い当たるわ。。。と思っていた。


これは、普通の蜜柑ではないけれど、むかしの実家の裏庭に、一本の夏蜜柑の木があった。

この木、外見からしても夏蜜柑のはずなのに、大ぶりの実を割ってみたら、なんとなく赤みを帯びていて、味も、夏蜜柑らしからぬ。そう、むしろ、グレープフルーツみたいなの。

 

さして大きくもない この木は、家の者たちからも、季節以外には関心を持ってもらえず、殆ど ほったらかしで、うちの庭に居着いてたノラ猫たちのトイレにされたりしたのにも めげず(笑)

ご近所に おすそ分けして なお余るほど、毎年、大ぶりに、たわわに実ってくれて、夏蜜柑系が苦手な私でも、その実を、グレープフルーツみたいに二つに切り、蜂蜜やブランディ等を少し垂らして、スプーンで すくって食した。

季節のあいだじゅう、たっぷり楽しませてくれた。

 

私は詳しく知らないが、うちの親父が、むかし、もともとは何処かで もらってきたものなのだとか言ってたけど、とにかく、その実の、良い意味での風変わりさに、当時、父が勤めていた化学関係の会社内で、ちょいと検査してもらったことがあるらしい。

結果は、糖度も高く、普通の夏蜜柑を かなり上まわり、ビタミンC等各種成分の含有量がズバ抜けて多かったらしい。

やっぱり、グレープフルーツあたりとの掛け合わせだったんじゃないかなという話だった。


両親が、晩年、庭のない新居へ引っ越すときに、この木も含め、幾つもの植木を諦めた。

 

親父の好物だったユスラウメも、ルビーのような美しく愛らしい実を夥しく つけていた。

親父は、およそ園芸の才というものに欠けていたくせに、いやに植え木の類を好み、お隣が園芸に凝っていて、また上手だったのに対抗心を燃やしていたのかもしれないが、

母が買ってきて植えておいた花の芽を雑草と間違えて何度も引っこ抜かれたウラミもあってか、

「私のほうが、よっぽどマシなんだから、おとうさんは やめときなさいよ」と苦情を言われても負けず、隙あらば、何かの苗を持ち帰っていた。


思えば、あんな程度の庭でも、ろくな手入れもないにかかわらず、様々な木々や花たちが、それぞれの季節で大いに楽しませてくれた。

 

透明な深紅の小さな宝石をビッシリと隠し持っていた、慎ましい柘榴、

幼い私や近所の幼馴染の おやつになってくれた甘い甘いイチジク、

小さな池の上に、精いっぱい枝を拡げて見事に咲き誇った藤の花房、

紅さした乙女がスッと立ち、ふと、頬を ほんのり染めたかのような、一点のシミもない白い肌から先端に向かうにつれてピンク色、端はクッキリと濃い赤に ふちどられた芍薬の花、

私の部屋の小窓と壁を覆い、朝の光のなかに爛漫な純白のジャスミンの香り、
なかでも、

艶冶な大年増が、さも、気だるそうに横たわっている風情の、ほとんど黒に近い濃い臙脂色の大輪の牡丹。

これは、居着きのオス猫どものオシッコで、木の根元が涸れてしまったらしいのだが、猫たちに甘い私も、このことを知ったときは、さすがに大いに落胆、立腹した(苦笑)


木たち、花たち、果実たちよ、ありがとう、ありがとう。


【旧ブログ“Eine Prinzessin des Lichtes”より】
おばけのような桜が おわったとおもうと
http://schneewittchen.iza.ne.jp/blog/entry/2653186/
 →おばけのような桜が おわったとおもうと 
 

 


 Stillman(1844-1927)The Enchanted Garden of Messer Ansaldo(1889)

 

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