2015.12.11 (Fri)
うちの母と同世代の、このかたも、「昭和」を体現したような人だった。
最近、
そういえば、あの野坂さんは、どうしているのだろうか、とチラッと思っていたら、とうとう、だった。
こういう、どこか憎めない名物男であり、
極限の世界を見てきて、誰に おもねることなく、言うべきことを断固として言える人が亡くなるのは、寂しい。
『<野坂昭如さん>「戦前がひたひた迫っていることは確かだ」』
毎日新聞 12月10日(木)21時44分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20151210-00000112-mai-soci
『野坂昭如さん死去 酒好きで無頼派…85歳、心不全』
日刊スポーツ 12月11日(金)10時22分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20151211-00000067-nksports-soci&pos=5
テレビや人前に出るときは、お酒を ひっかけてからでないとダメだったのだそうな。そしてサングラス。
奥さまも、御夫君を評して、「危険」な男だというふうなことを おっしゃったそうだけど、
世間的にも、破天荒で無頼なイメージが つよい その裏に、シャイで独特な繊細さと真面目さも持ち合わせておられたように思う。
――「浮かれた気分でいると、世相が悪くなる」――
浮かれた時代を危惧し、内心で苦々しく思っておられたのだろう。
最近、この世代の人たちが頻りに言う、
戦前の足音が聞こえる、とか、あの頃の空気と酷似しているんだ、という警告。
とても気にかかるのだ。
ついに、暴走する首相が登場し、これを、誰も止められず、
それどころか、
これが、いわゆる「大政翼賛会」というやつかというべき事態になっても、
「日本が戦争するわけないんだ、そんなこと、ブサヨクが脅かして言ってるだけだろ!」
と言い張る。
それこそが本当の「平和ボケ」というものなのか。
あるいは、
『日本会議』等の、かつての「エリート」階級の残滓連中が、過去の栄光よ もう一度、とばかり、時代錯誤にして何やら不穏なことをば企んでいるという、
ある種、これも いわゆる「逆コース」的なものなのかと不審を呼び覚ます風向き。
軽薄、軽薄、軽薄!
身震いするほどの軽薄!!
あの安倍氏らの思考とコトバの、耐えられない軽薄さ。
許せる軽薄とは違うのだ。
そして、心細い。。。
近頃は、「明治は遠く」というのも過ぎて、
大正が、そして昭和が、どんどん遠ざかっていく。
野坂さんのような人には、もう少し、お元気でいていただき、
今一度、最後警告の大砲をドッカンと打ち鳴らしていただきたかった。
かの『火垂るの墓』、原作を忠実に再現した漫画作品で知って、平和が当たり前の時代に育った小学生の心にも、深いショックを もたらした。
以来、何十年になっても、そのなかの場面 場面が よみがえってくる私は、アニメ作品で表現された『火垂るの墓』を、いまだ、正視し、観とおすことが できないでいる。
それでも、
親の世代から直接、体験したことを聞けるのが せいぜいの私たち、
アタマでは重々分かっているようで、なにしろ、直に体験しては いないのだから、自分のなかで敏感に嗅ぎ分け、明確に比較することが できにくい。
その私たちの世代より、もっと若い世代へと移り変わり、
遠からず、もっともっと若い世代へと移り変わっていく。
時は どんどん過ぎていく。
だから、私は、じわじわ恐くなってきているのだ。
わが子が いないことを感謝したくもなるほどに。
“The Misfits”