2015.11.08 (Sun)
『「尖閣」問題と「中国脅威」論【2】-4』
の続き。
【旧ブログの記録より】
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うーん、あとからできた「大陸棚についての規則」という解釈を、どう適用するか、しないかってのが問題?
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正当な根拠の有無にかかわらず、中国が尖閣は自国の領土だと主張し、両国政府間で合意ができていない以上、何らかの合意なり調停なりが成立しない限り、その地域は不安定な状態に置かれ、紛争の火種となり続ける。本来はこうした領土問題の調停の場として国際司法裁判所があるが、日本は「領土問題は存在しない」という立場なので、調停には後ろ向きだし、もう一方の中国は、そもそも国際司法裁判所の強制管轄権を認めていない。
唯一の超大国である米国は、この問題は日中間の問題として、あくまで静観の立場をとっているため、第三国による調停も期待ができない。となると結論としては、中国が尖閣の領有権を主張する限り、日本は実効支配を続ける、つまりこれまで通り海上保安庁などを使って領海や領域の侵犯を排除し続けることで、いずれ中国側が諦めるなり方針を転換するのを待つしかないというのが、横田氏の考えだ。
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具体的には、仮に船長を釈放するのであれば、検察、外務省などの意見を踏まえて、最終的には政府が、良好な日中関係を保つために釈放を決定した形にすべきであったと横田氏は言う。その場合、法務大臣の検察に対する指揮権の発動が必要になるが、「良好な日中関係を保つために」は十分に指揮権発動の根拠となりうる。そうしておけば今回の衝突事件は、日本が尖閣領域での主権、つまり実効支配の継続を証明しながら、その一方で、対中関係にも十分配慮している姿勢を見せられる好機となり得たのではないかと、横田氏は残念がる。
釈放の最終判断は政府がすべきだった
今回の事件が起きたのは日本の領海なので、日本が拿捕したことは正当といえますが、日本はこれまで、あえてそのような対応をしてきませんでした。それを日本がしたので、中国側は危機感を持った、あるいは怒ったというような表現が使われています。法律的には正当な行為をこれまで日本がせず、してみたら中国が怒ってしまったというのは、国際法の観点からはどのように理解すれば良いのでしょうか。
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中国が怒る・怒らないというのは感情的な問題ですが、中国が注文を付けてきた基礎は、尖閣諸島は中国の領域であり、その近海で日本の巡視船が中国の漁船に停船命令をし、拿捕しようとした行為自体が、中国の主権侵害だと主張しているように見えます。
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しかし尖閣諸島は完全に日本の領土ですから、当然日本の主権行使ができます。そこでは、日本は主権行使をしなければいけないし、し続けなければいけません。そうしないと実効支配をしていないことになります。そうすると、今回の釈放が実効支配を放棄したことになるかどうかということが、ポイントになります。
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釈放が問題になる可能性があるわけですね。
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しかし、こちらの理解ではそうはなりません。日本政府は、那覇地方検察庁の判断だという言い方をしていますが、日本の刑事訴訟法の規定に従って、起訴便宜主義、つまり、検察は起訴することもできるし、色々なことを考慮して起訴しないこともできることになっています。実際今回は、起訴しませんでした。起訴せず、退去強制としました。この退去強制手続きも全部、日本の国内法にしたがってやっているわけです。日本の国内法の枠内で全部行った以上、日本の主権は全部行使されているということになります。
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起訴便宜主義ですけれども、那覇地検が日中関係を考えて釈放したと言ったことが一部では問題になっています。
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日本の国内法上の問題なので、中国との関係での問題は出てきませんが、日本の国内で見ると、必ずしも適切な処理ではなかったと思います。その理由は、日本では外交は外務省が一元的に処理しています。この問題は、那覇地検が「日中間の関係を考慮して」と言っていますね。これを考慮するのは、検察ではなくて外務省です。検察がやったとしても、最終的には外務省が決めることです。外務省ということは、最終的には政府です。
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それが今回の場合、「政府は政治的な判断をしないで、検察側の判断を了とした」と、こういう官房長官の説明ですね。そこのところ、私にはすっきりしません。本当は、やはり政治的な判断をするのは、政府でなければいけません。外務省が外交上のことを配慮して、政府がそれを考慮して、釈放を決めるということを、しなければいけないです。
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政治が決めるということは、結局は「法務省の指揮権」ということにならざるをえませんね。指揮権というかたちで検察に、今回は起訴はしないと決めたと言えばすっきりするし、責任もはっきりします。
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指揮権発動というのは、戦後1回しかなかったので、きわめて重大な決断になりますが、私は今回の事件はそれくらいの重要性をもった、日中関係にかかわる重要な問題だと考えます。
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今後の日中の良好な関係を考慮して、めったに行使しない指揮権を行使したということは、外交上、中国に対する非常に良いメッセージにもなります。私はむしろ、それをした方が日中関係にも良かったのではないかという考えを持っています。
(文字強調部分は、当ブログ主による)
↑この記事を読んで、やっと私も、まずまずの把握はできたのだが、
先の記事にあったように、「今回の事件で、死者と負傷者が出なかったことは幸いだった。が、事件はまた、必ず起きる。」
ということは、上記の横田氏の示すところでは、
「結論としては、中国が尖閣の領有権を主張する限り、日本は実効支配を続ける、つまりこれまで通り海上保安庁などを使って領海や領域の侵犯を排除し続けることで、いずれ中国側が諦めるなり方針を転換するのを待つしかない」
ということだ。
『再発防止で日中協議を=尖閣事件受け菅首相―参院代表質問』
時事通信 10月8日(金)11時41分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20101008-00000053-jij-pol
これは、さしあたり、仙谷官房長官の言う、中国漁船の、いやに鋭角だという鋼鉄の舳先に負けないよう、せいぜい、わが海保巡視船の どてっぱらを頑丈にしておくことかな。(苦笑)
カテゴリ: 政治も > 外交
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