2015.10.23 (Fri)
http://www.msn.com/ja-jp/news/national/%e5%ae%89%e4%bf%9d%e6%b3%95%e6%a1%88%e5%9b%bd%e4%bc%9a%e6%89%bf%e8%aa%8d%e6%ad%af%e6%ad%a2%e3%82%81-%e9%aa%a8%e6%8a%9c%e3%81%8d%e3%82%82/ar-AAcRXat?ocid=FUJITSUDHP#page=2
安全保障関連法案に盛り込まれた自衛隊海外派遣の「国会承認」は、戦争への歯止めとなるのか。法案の衆院審議は大詰めだが、議論が尽くされたとは言い難い。欧米諸国では、海外派遣の政府判断に対し議会が関与を強める流れにある。日本では特定秘密保護法の影響もあり、逆に国会の権限が骨抜きにされ、「追認」に堕す懸念が現実味を帯びている。【日下部聡、樋岡徹也】
「国会承認などの厳しい歯止めがあります」
安保法制をPRする自民党のパンフレットは、集団的自衛権で武力行使を認める際の「新3要件」とともに「国会承認」をうたう。しかし、その実効性を巡る与野党の議論は、まったく深まっていない。
歯止めとなるかの分かれ目は、承認・不承認を判断するために十分な情報を、政府が国会に開示するかどうかにかかっている。そこに、特定秘密保護法が影を落とす。
安保関連法案では、日本の存立が脅かされる事態(存立危機事態)などで自衛隊を派遣する際、政府は国会に「事態」への「対処基本方針」を示すことになっている。中谷元・防衛相は1日、安保法制の特別委員会で、「事態」認定の根拠となる事実に特定秘密が含まれる可能性を認めた。
過去の自衛隊イラク派遣で政府が国会に示した「基本計画」に特定秘密保護法を当てはめると、派遣の地域や部隊の規模、装備(武器)などを秘密指定することが理論上は可能だ。
国会職員出身の武蔵勝宏・同志社大教授(立法政策過程論)は「派遣の詳細な情報を全議員に提供し、派遣中止の議決権も国会に与えるよう安保関連法案を修正すべきだ」と提言する。
国会承認の実効性が疑問視されるもう一つの理由は、承認を判断するタイミングだ。
派遣の前か、後か。事前承認なら計画段階から妥当性を議論でき、政府が必要な情報をきちんと出さない場合には「不承認」で対抗できる。事後承認ではそれが極めて難しい。
10の法律を改正する法案と新法案1本からなる安保法案で、事後承認を認めないのは新法案の「国際平和支援法案」のみ。国連決議を受けて国際紛争で他国軍を支援するための立法で、与党協議の際、公明党が自民党を押し切り「例外なき事前承認」の規定を入れさせた。それ以外の法案は、緊急時の例外的な事後承認を認めている。
衆院特別委で国会承認の問題を質問した木内孝胤議員(維新)は、取材に「政府が勝手に『緊急』を定義するかもしれない。自衛隊が派遣された後に(国会の不承認で)戻すのは事実上難しい」と話す。
欧米各国では、軍の海外派遣に対する議会のブレーキが強化されている。
最も厳格とされるのは、日本と同様に第二次世界大戦の経験から海外派遣に慎重だったドイツだ。「議会の同意があれば、北大西洋条約機構(NATO)域外への軍派遣は合憲」とする1994年の連邦憲法裁判所判決を機に、2005年に連邦議会による承認が法制化された。派遣の際に出す議案に部隊の能力から予算まで詳しく記すよう政府に義務づけ、議会側は承認を撤回する権限も持つ。
オランダ政府は議会の要請を受けて01年、派遣の検討段階から情報を提供し、説明する指針を設けた。
米国の歴代大統領は武力行使に議会の承認を不要としてきた。しかし、オバマ大統領は13年、シリア攻撃の承認を議会にあえて求めた(攻撃は行われず)。
このシリア攻撃については、伝統的に首相の決断を追認してきた英国議会が、政府の提出した容認動議を否決し、世界に衝撃を与えた。イラク戦争に参加し、多数の犠牲を生んだことへの国民の不信感が背景にあったとされる。
(文字強調部分は、当ブログ主による)
『安保法案:隠された米艦給油 懸念される特定秘密保護法』
http://www.msn.com/ja-jp/news/national/%e5%ae%89%e4%bf%9d%e6%b3%95%e6%a1%88%e9%9a%a0%e3%81%95%e3%82%8c%e3%81%9f%e7%b1%b3%e8%89%a6%e7%b5%a6%e6%b2%b9-%e6%87%b8%e5%bf%b5%e3%81%95%e3%82%8c%e3%82%8b%e7%89%b9%e5%ae%9a%e7%a7%98%e5%af%86%e4%bf%9d%e8%ad%b7%e6%b3%95/ar-AAcSaBQ?ocid=FUJITSUDHP#page=2
特定秘密保護法がなかった過去の自衛隊派遣でも、国会による政府監視が秘密の壁に阻まれ、難航した例がある。海上自衛隊の「燃料転用疑惑」だ。
米国などによるアフガニスタンやパキスタンでの対テロ作戦の支援で、海上自衛隊は2001〜10年、テロ対策特別措置法などに基づきインド洋で他国艦船への給油活動を行った。ところが03年、無関係なイラクでの作戦に参加していた米空母キティホークが、海自補給艦から間接的に給油を受けたことを米海軍司令官が記者会見で明かした。特措法の逸脱だとして野党は追及したが、政府は否定。一度は沙汰やみとなった。
ところが4年後の07年9月、横浜市の市民団体「ピースデポ」が米国の情報公開法で入手した米艦記録の分析結果を公表した。
キティホークは政府の説明よりはるかに多い給油を受け、アフガンから遠いペルシャ湾奥まで入っていたことが分かり、疑惑が深まった。
野党の激しい追及に、防衛省は給油量の誤りを隠していたことを認め、当時の福田内閣は、さまざまな防衛関連情報を公開せざるを得なくなった。
「米国は手書きの航海日誌など1次資料も出してきた。日本と違って『政府の情報は国民のもの』という考え方が浸透している」と、ピースデポの湯浅一郎副代表は話す。防衛省にも補給艦の航海日誌を開示請求したが、読めたのは表紙だけで、中身はすべて黒く塗りつぶされ、船の位置すら分からなかったという。
「政府は、安保法案の前に特措法をまず総括すべきなのに、何もしていない。特定秘密保護法を考えるとますます情報を出さなくなる可能性がある」と湯浅氏は懸念する。